忍者ブログ
Admin / Write / Res
駆け出しの翻訳屋といいながら早数年。 学習したことをちょこちょこ書くつもりでしたが、最近は余暇の話が多いような。。。 そもそも、いつまで駆け出しなんだ?!
[560]  [559]  [558]  [557]  [556]  [555]  [554]  [553]  [552]  [551]  [550
友人に勧められ、「出版禁止」を読んでみました。

後で知ったことですが、この本は叙述トリックで話題になり、読み終わったあとも謎解きが必要になるので、ネット上にもネタバレサイトが複数存在するとか。。。

個人的な趣味としては、やはりミステリーは小説の中ですべての謎解きをしてほしい、と思います。凄惨な殺人事件であっても、最後にすっきり謎が解けることで爽快感を味わい、気持ち良く本を閉じることができる、と思うのですが。。。
そういう意味で、この本は叙述トリックは面白いけれど、読後感は今ひとつでした。(もちろん、本人の解読力の問題という話も。。。)

最後の「あとがき」で、おおよその謎は解説され、仮名のアナグラムはネット上にネタバレがあるので、だいたいのことは分かるのですが、若橋がなぜそのような行動をとったのか、というところは結局すっきりしませんでした。

ついつい、いつまでも考えてしまうので、とりあえずわかったことを整理して、次の本に進もうと思います。^^;

というわけで、分かったことを以下に整理します(下の「続きはこちら」をクリック)。



まず、「視覚の死角」が「刺客の刺客」の間違いであるのは、想像がつきます。
若橋呉成が「われはしかくなり(我は刺客なり)」、新藤七緒が「どうなしおんな(胴なし女)」のアナグラムであることはネットで知りました。^^;

こうした情報をもとに読み直したところ、もう一つ気になったのが、「新藤七緒・第四回インタビュー取材・採録」の部分です。

これは、「心中」の実行中に行われたものと最初は思っていましたが、実はこのとき七緒はすでに死亡しているので、これは、若橋の妄想なのか?という問題が発生します。
しかし、このインタビューの記述の直前には、
「※以下は、彼女とのやりとりをまとめ、再構成したものである」
と書かれています。若橋はこのルポルタージュに「不正確な記述などどこにもない」と言っているので、それを信じるなら、このインタビューはもっと前に実際に行われたもので、それを再構成して、ここに記載した、ということになります。

では、その時期は、と考えると、内容からして、いったん東京に行って戻った後で、かつ、七緒が殺される前。となると、それは、2/19しかありません。

これを前提に、もう一度流れを整理してみます。
ルポルタージュの後半、草稿の部分からでいいでしょう。

12/23
見当違いの取材を行ったことを反省中。
12/24
取材を続ける資格はないと思っている。
12/26
七緒に取材の中止を告げる。
12/27
取材の中断を編集担当にどう連絡するか悩んでいる。
これまでの取材でなんとか記事を成立させようと考える。
12/29
これまでの取材を整理して、誤りに気づく。
「一つは、心中事件が起こった背景の、見当違いの推察」
見当違いの推察とは、神湯が熊切を謀殺した、という考えのことでしょう。

「もう一つは、この心中事件における、私の役割」
この「役割」ですが、その直前に漢字の変換ミスを見つけたと言っているので、「視覚の死角」が「刺客の刺客」であることに気づき、自分が「刺客(熊切を謀殺した人)を葬る刺客」であると気づいた、ということでしょうか???

神湯の刺客は、刺客自身が、依頼者が神湯であることを知らないケースも多いと書いてありました。なので、若橋が、依頼者=神湯とは知らないということはあり得ますが、刺客である自覚がなかったということがあるでしょうか?

若橋は、知人から、「熊切敏の死の真相を知りたがっている人物がいる。どうだ、君が真実を解明してみては?」と言われ、引き受けています。「依頼者の素性は明かせないが、(中略)ある程度の取材費なら都合していい」とも言われています。恐らくこの依頼者が神湯でしょう。
若橋は、依頼者が神湯とは知らずに、熊切が神湯の刺客に殺されたと思い込み、ルポルタージュの前半は失敗に終わっています。しかし、神湯の手下である高橋に取材したところで、誤りを指摘され、先の「刺客の刺客」の話になります。つまり、この事件における刺客の刺客に早く気づけ、と高橋に言われるわけです。

ここからは、想像でしかないのですが、依頼されたのは真相解明だけではなく、刺客を明らかにした上で、抹殺しろってことではなかったのでしょうか。そもそも、若橋は、数年前に大病から復帰したものの、近年は仕事に恵まれなかった、とあります。その若橋が、熊切の死の真相解明に全力を注いでいる(ほかのことはしていない)ようなのは、「ある程度の取材費」だけではないから、と思うと納得できるのですが。。。ただし、ルポルタージュとして発表する以上、刺客となることを引き受けた、とは書けないので、「ある程度の取材費」としか書いてないのでは、、、と思います(これは書かなかっただけなので、ルポルタージュの正確性の問題にはならないかと)。
ただ、これだと、「刺客の刺客に早く気づけ」と言われた理由が分からなくなります。黒幕が誰かを間違えているだけで、刺客の刺客であることは分かっていることになりますから。
さらに想像すると、真相解明を依頼されたときに、解明した暁には・・・と、さらに何かあることを匂わされていたので、高橋の言葉で気づいた、と考えることもできます。

これ以上は分からないので、まぁ、これはこの想像でいいことにしておきます。

1/12(2 週間ほど日付が飛ぶ)
取材再開を決意し、七緒と再開。
新しい情報は得られず。
1/18
七緒の負のオーラに気づく。
1/25
七緒の体調不良のため取材中断。
1/29
七緒の家を再訪するが、体調不良のため取材中断。
七緒が鍋でもてなす。
七緒にほだされて、泊まることになる。
1/30
夜中に七緒の絶叫を聞く。
一線を越えてしまう。
2/12
半月同棲したことが明かされる。
七緒は永津佐和子に計り知れない恩義を受けていることを知る。
2/15
帰京する。
2/16
神湯と熊切のつながりを確信する。(神湯が熊切を殺すことはない)
2/17
熊切と永津の夫婦間の問題を知る。
「明日もう一人、取材を依頼していた関係者の一人と会う」
とあるのは、第四回インタビューの内容から、永津佐和子で間違いないでしょう。
2/19
七緒の家に戻る。
取り立てて何もなかったように書かれていますが、最初に書いたように、翌日七緒が殺されたことから、この日に第四回インタビューがあったはずです!
つまり、心中が偽装であったことを見抜き、そのトリックと動機(永津佐和子を救うため)を暴いたのは、この日のはずです。
2/20
午前二時に絶叫で飛び起きる。
七緒を殺してしまう。
2/21
担当編集者に、タイトルを「カミュの刺客」にすることを伝える。
「若橋呉成」、「新藤七緒」の仮名もここで決定している。
つまり、この時点で、七緒の「胴なし女」は決定していたことになる。

これ以降は特に発見がなかったので、省きます。

2/19にインタビューがあったと考えると、その翌日の殺害があまりに性急な気がするのですが。
インタビューで真相をぶつけた時点で、刺客の役割を果たすことを覚悟していたということでしょうか。

それと、このインタビューが一言一句事実であるとすると、
「私にはもう時間がないので、単刀直入に聞きます」
の「時間がない」とはどういうことなのでしょう。
やはり、翌日の殺害を覚悟していた、ということでしょうか?
当日の記述をみると、計画的に殺害したわけではないように思えるのですが、それも真実をうやむやにするための偽装でしょうか?
それと、インタビューの最後の質問「あなたは、私を愛していましたか」に七緒はどう答えたのでしょう。3/5(「心中」の日)の記述では、「最後の質問には答えず、七緒はじっと押し黙ったままである」となっているが、この部分は再構成されたインタビュー部分ではないので、実際にインタビューされた 2/19 になんと答えたかは不明です。
答えなかったから殺害したのか、答えたから殺害したのか、どちらとも解釈できます。

。。。これ以上は分かりません。

こればかり考えるのが嫌になったので、頭の中を空にするため、ここに書き出しました。

明日から別の本を読みたい!


拍手[11回]

PR
この記事にコメントする
Name
Title
Color
Mail
URL
Comment
Password   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret(管理人のみ表示)
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11
14 15 16 17 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
最新コメント
[03/24 dab woods]
[02/03 tv.zfilm-hd.biz]
[12/20 situs judi online]
[07/22 明風]
[07/22 明風]
プロフィール
HN:
明風
性別:
非公開
自己紹介:
技術屋から翻訳屋に転身しようと、退職。
とりあえず、安定して翻訳の仕事を貰えるようになりましたが、まだまだ駆け出しです。胸をはって「翻訳家です」と言えるまで、日夜修行中(?)の身です。
趣味は音楽鑑賞と城めぐり。月平均 1 回以上のライブと登城がエネルギー源です!
バーコード
ブログ内検索
P R
フリーエリア
Copyright ©   明風堂ブログ All Rights Reserved.
*Material by Pearl Box  *Photo by Kun  * Template by tsukika
忍者ブログ [PR]